我孫子のグループホーム

Group home in Abiko

千葉県我孫子市

知的障がい者のグループホームと、ショートステイおよび相談事業所の合築。2つにも見えるし、1つにも見える。そのような形態を追求した。
A group home for the intellectually disabled, a short stay facility, and a consultation center, which can be seen as two facilities or one.

グループホームと相談事業所・ショートステイは屋根の切れ目によっておおまかに分けられており、それぞれ専用の玄関を持つ
南側立面。繊細な母屋の跳ね出しによる薄い屋根
食事を運ぶ車のために北側の駐車場には庇を掛けた
グループホームのデイルーム。ブドウ棚とよぶ格子状の梁架構は水平力を伝達するとともに、みかけの天井高さを抑える。その他にも、スプリンクラーや照明などを統合
デイルームは6つの個室に囲まれる。天窓に熱だまりとなる凹みを設け、冬期は暖気を床面に吹き下ろす。夏期は温度センサーによって熱気を外部に排出する
キッチン内部。ブドウ棚ごしに天井が見える
箱状の塊のあいだは居場所としての共用部である。洗面カウンターの外部の縁側にはベンチを設けている。「箱」の出隅はR25mmとし、柔らかさをもたらす
屋根が凹んだところの下部は事務所。天井がグループホームとそれ以外とを分ける。梁の高さが連鎖的に切り替わる
ショートステイ側の廊下端部。窓からは北側の駐車場が見える
グループホームの個室内観。腰壁や見切り材に木材を多用。ビスをもんだり、手摺やフックを増やしたりすることが容易で、個々の暮らしの場をつくりやすい
個室からデイルームを見る。外部サッシと同様に欄間を設け、プライバシーに配慮しながらの自然通風を可能にする
欄間や天窓から入る光と床に跳ね返る光。上下に異なる光が積まれる
道端からデイルームのブドウだな天井が見える。内部の木質感が外部に伝えられる
屋根の切れ込みを活かして雨水をため、植栽や畑の水やりに使う
地域社会の中のグループホームは周辺との関係をつくるべきである。屋根と外部空間でもってそれを実現しようと考えた

地域社会との共生
この建築は、知的障害者グループホームを母体に、相談事業所やショートステイが合築された複合建築である。
機能の複合は地域の福祉拠点としての要請である。一方で、グループホームに住む6人にとっては、他の機能は関係がない。この状況を形態化しようと取り組んだ。
切れ込みのある屋根はその取り組みの結果である。2つにも見えるし、1つにも見える。屋根の切れ込みは同時に屋根版を構造的に安定させる。切れ込み部分で集めた雨水は、周辺の緑を育てる源泉にもなっている。
ノーマライゼーションの理念に基づき、入所施設からグループホームへの移行が進められてきた。2020年にはグループホームの利用者数は入所施設の利用者数を上回った。しかしながら、市街地におけるグループホームでは「ミニ施設化」も散見される。「周囲の人びとに迷惑を掛けないこと」に配慮するあまり、周辺との関係を絶ち、利用者の行動を監視する。
ミニ施設化の一端を担っているのは、福祉施設特有の大きな平面と、「家族イメージ」の付与である。これらは結果的に、建物の中心部において「高すぎる天井」か「鬱陶しいあんどん部屋」を生み出す。われわれは「ブドウ棚」という構造的な工夫でこの問題に応えた。
プランは、構造的な壁による箱状の空間を点在させている。居場所の選択性や回遊性を獲得することが、他者や外部と交流するためのきっかけになると考えている。

用途:グループホーム、相談所、ショートステイ
発注者:社会福祉法人柴崎すずしろ会
設計者:
 建築 仲建築設計スタジオ
 構造 坪井宏嗣構造設計事務所
 設備 創環境設計
施工者:大塚建工
規模:
 敷地面積 881.11㎡
 建築面積 297.03㎡
 延床面積 250.62㎡
 階数 地上1階 
 構造 木造